藍染め刺し子糸について

藍染め刺し子糸について

先日、インスタグラムに投稿した藍染め刺し子糸の写真に質問を頂きました。

「どのような藍染めですか?」というもので、草木染め&天然藍染めとだけご説明を差し上げている私達の藍染めでは、なかなか全容をご紹介しきれていなかったなと反省しております。誤解を招くことは避けたく、インスタグラム上で、できる限り丁寧に返信を差し上げたつもりなのですが、それでもまだ言葉不足な気がしてしまって、改めてブログにて、私達の藍染めと、その藍染めについての考え方を紹介いたします。

 

まず始めに、藍の色を染色する方法として、大きく2つに分類できると考えています。

化学染料を使った着色」か、「自然&天然染料を使った染め」か。

 

藍染め刺し子糸

 

 

天然藍か、合成藍か。

 

大きくわけた2つを更に細分化して、私達が把握している4種類の染色方法をご説明します。

*染色が専門ではないため、文献や本、染め師の方のお話をまとめているだけです。間違い等ありましたら、ご指摘下さい。

 

1. 天然灰汁発酵建て

日本の伝統的な藍染め方法です。工業的に使われる合成藍との差別化から、「正藍染め」だったり「本藍染め」と称されます。タデ藍の葉を乾燥&発酵させ「すくも」を作り、灰汁(天然のアルカリ性の液体)と混ぜることで藍染め液を作成します。発酵なので独特の匂いが出ることもありますが、発酵が完了すると匂いもなくなります。

「昔ながらの日本の藍染め」は、この天然灰汁発酵建てでの藍染めです。

 

大量に且つ安価に、また多くのインジゴ(青い成分)を含む代替品が作られたことより、手間がかかり、かつ費用もかかる正藍染めは、だんだんと衰退していきました。第二次世界大戦中に藍の栽培が禁止されたこともあり、一時は途切れてしまった文化のようです。それでも徳島の藍師の皆様が、(禁止された時でさえ副業として)藍を育て続け、文化を継承し、今に伝えられています。

 

個人的には、もう大好きです。刺し子より好きかもしれない(笑)

 

2. 天然藍の化学建て

 

天然草木としての藍(すくもだったりインド藍だったり)を、化学のチカラを使って藍染め液にする方法です。基本的な原理は、(1)の天然灰汁発酵建てと一緒です。化学式は一緒なわけで、その過程を再現する為に、化学のチカラを使うという方法です。

 

藍染めは、原料を水に溶かしただけでは染まりません。原料をアルカリ性にて「還元」させることにより、布が藍染めに触れて「酸化」する過程で綺麗な青色(藍色)に染まります。灰汁でアルカリ性にしていた過程を、化学的なアルカリ物質を使って藍染液を作ることが、「化学建て」と呼ばれます。

 

還元剤としてはハイドロサルファイトや苛性ソーダが、強アルカリ性で、よく使われているとのことです。

私達は苛性ソーダが劇薬に指定されていることを知り、できるだけ使いたくないなぁと藍染めをずっと躊躇ってきました。天然灰汁発酵建ては、試したものの、管理の手間と染めの技術が足らず……。そんななか、ハイドロや苛性ソーダを必要としない還元剤と出会い、それを利用して藍を建てています。メーカーの説明書きに「発酵」という表記があり、また発酵が始まる際の匂いや、藍の華と言われる発酵の副産物も出ることから、「藍染の発酵液」として、今までウェブで紹介したり、配信で紹介したりしてきています。

 

3. 天然藍と工業用藍のミックス

 

人気のある藍染めの研究は進んでいて、現在では、天然の藍と人工的な藍のミックスの藍染染料も存在します。

この染料は、「アルカリ化」そのものを不必要とした手軽な染料で、水に溶かして液体を作るだけで、誰でも手間なく染めることができるものです。薬品を使わない為、子供にも安心です。

 

私達も何度か試したのですが、理想とする望む藍色とならなかった為、上記の還元剤を使った天然藍の藍染めに落ち着いています。

 

4 . 合成藍

大量生産の時代に必要とされ、手間なく大量に染めることができるよう工業的に作られた藍のことです。

合成藍については、知識も経験も乏しく、またウェブサイトで勉強したくらいしか情報がないので、纏めることは控えます。私達が使う単色刺し子糸(コロン刺し子糸)の#015は、藍染めの色で、この合成藍から作られているのだと想像しています。(未確認です。)

 

藍染めの草木染めの定義をどうするか

 

さて。

私達は草木染めの刺し子糸を製造し、販売しています。

古布や襤褸の補修に合う刺し子糸を探す際、人工染料では最適な刺し子糸色が見つからず、結果として辿り着いた所が草木染めの刺し子糸でした。最初は茜やタンガラから染めの勉強を始めました。結果、様々な草木の天然染料に手を広げていますが、どの色も古布にも合う素晴らしい色糸になっていると思います。

時間の流れが作る古布や襤褸の独特の風合いに合う色は、草木から染めることができる、こちらも「時間と共に変化する色」だったのです。

 

上記の4つの藍染の分類の中で、現在の私達の藍染は(2)の「化学建て」のカテゴリーに入ります。
個人的なことを言うと、(1)の天然灰汁発酵建ての藍染めに憧れと尊敬を抱いている(2)だと思っています。先程も書きましたが、ハイドロや苛性ソーダは使いたくないなと思う中で出会った還元剤を利用していて、刺し子のプロであり、また藍染めのプロではないからこその妥協すべき所を飲み込んだ結果です。

 

正直な話、天然ではない還元剤を使っているのに天然草木染めと名乗ることに後ろめたさがないわけではありません。

しかしながら、混乱を防ぐためにどうしたら良いかと考えた末、(2)と(3)の間に、草木染めと人口染料染めのぼんやりとした境界線を引きました。ただ、ここは個人の判断だったり立ち位置だったりによって変わってくると思います。少しでも天然が入っていれば「天然草木染め」と呼ぶ人もいるだろうし、逆に少しでも人工の染料が入っていれば「それは化学染めだ」と言う人もいると思います。

 

その判断は、染め師ではない私達がすべきことではないと思っています。

ただ、私達は「刺し子に合う草木染刺し子糸」を作るために、(2)の藍染めを使い、また他の草木染めも、100%天然の染料を使っています。逆に言えば、染色で使うもの(色止め剤)等で、化学のチカラを借りることを「悪」だとはしていないのです。天然の染料にはこだわっていますが、染料をどう使うかについては、それほどコダワリを持たず、綺麗な色が出せるかに焦点を当てています。

 

尚、上記のカテゴリー。番号が下がれば下がるほど(4番の程)、染色は楽で安価になります。(1) の正藍染めが一番手間がかかり、また費用もかかります。

 

伝統への尊敬と、技術への賞賛と

 

私達は、というか淳は、正藍染めへの強い憧れを抱いています。

タデ藍の葉からすくもを作る。すくもを灰汁で建て、発酵を完了させた後に染める正藍染め。その手間と技術、そして伝統に対する尊敬の念も込めて、私達の藍染刺し子糸には、「正藍染め」や「本藍染め」といった言葉は使っておりません。伝統を残される方々の姿勢を尊敬しつつ、私達は刺し子の楽しさを広めることに専念しようと思うのです。

私達は染め師ではなく刺し子屋であり、今現在必要なのは古布に合う天然から生まれる色であり、「正藍染め」と「合成藍」の議論については、個人的な思いを述べるに終えたいと思っています。

 

今後、正藍染めにて製品化できることがあれば、自信を持って正藍染め / 本藍染と記載していきます。

 

正義と悪が存在するのか?

 

正藍染めが大正義で、合成藍は悪」というようなブログも目にすることがあります。

気持ちはわかります。刺し子も似たような道を通ったことがありますし、伝統がはっきりしている程、正義と悪を区別したくなるのはよくわかります。しかしながら、「化学のチカラを借りた藍は悪だ」と断言してしまうことは、少し違うのではないかと思うのです。その化学のチカラを借りた藍染めは、多くの化学者の努力によって現代に残されています。そして、使われている。それを悪と呼ぶのには抵抗があるのです。

 

これは私の考えなのですが、世界中で行われている「藍染め」に正解も不正解もないと思っています。また、「藍染め」にホンモノも偽物もないと思うのです。化学染料で染められた藍が間違いだとも思わないし、また劣っているものとも思いません。違いは勿論ありますし、好き嫌いもあるのは重々承知の上で(僕自身正藍染めが大好きと公言した上で)、やっぱり正義と悪とカテゴリー化してしまうのは違う気がしています。

 

刺し子の世界に、正解がない感覚に似ています。

違うのは、藍染めは刺し子以上に「必要とされ」、工業化のスピードが早かった為に、伝統そのものが希少化したことなのかもしれません。

 

 

尚、正藍染めには”ホンモノ”と”偽物”が存在します。

少し上記の文章と矛盾する感じを与えてしまうかもしれませんが、「藍染め」には正も偽もありませんが、「正藍染め」には正と偽が存在します。

 

化学建てしているのに、正藍染と記載した作品を販売するのは虚偽表示です。刺し子には正解や間違いはありませんが、ホンモノ&偽物は存在します。多くは個人の嗜好に左右されますが、針仕事が全くされていないプリント柄布を「刺し子布」として販売されている場合は、偽物です(刺し子柄布ならわからなくもないけれど)。

また、襤褸にはホンモノと偽物があり、それはは襤褸っぽいパッチワークと、補修を原点とした襤褸です。

 

虚偽の記載はよろしくない。それだけは私達も細心の注意を払い、「藍染め」を楽しんでいます。

ホンモノを尊敬する気持ちを大切にしながら、しかしながら、排他的な考えをできるだけ持たないようにする。それが私達の現実的な答えです。

 

学びの日々。刺し子も藍染めも。

お恥ずかしながら、私自身、まだまだ未熟で日々勉強です。

NYCで藍染集団BUAISOUに出会い、以前から興味があった正藍染めのことが、本格的に好きになりました。その後、本を読んだりお話を伺ったり、っと本藍染めについて勉強をしているつもりですが、まだ実際に正藍染めに手を出すことはできていません。タデ藍を育てるところからやってみたいとは思っているのですが。

 

私達のウェブ上で、藍染めに関して間違いがあれば、ご指摘頂ければ幸いです。

 

 

繰り返しとなりますが、理想とするのは、「正藍染め」であることに間違いはございません。ただ、今の私たちの技術と資金力では、お客様にご満足いただける正藍染めの刺し子糸を、ご満足頂ける値段でご提供できないだろうという結論を一度出しています。刺し子糸の値段が、今の草木染めの金額が上限だと思っている以上、なかなか正藍染めへの挑戦という費用を捻出できずにいるのです。

なんだかんだで私達は刺し子集団であり、藍染めや草木染めの集団ではないので、刺し子に人生を捧げるだけで精一杯なのです。でも諦めてはいません。いつか形になるように。

 

 

簡単な纏め

 

めちゃくちゃ長くなってしまいました。インスタグラムでのお返事が言葉足らずだったなぁと思ったのは正しかったようです。

簡単に纏めると、私達の藍染めは、ハイドロや苛性ソーダではない還元剤を使った、天然藍染料(すくも / インド藍)を使った藍染めであり、正藍染めと呼ばれる日本の伝統的な藍染めではないこと。

染料である藍は天然の草木であり、また他の草木染め等も、必要に応じて化学物質を使うこともございますが、染料は常に草木であることをご理解頂ければと思います。

 

今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

 

二ツ谷淳(文責)

One thought to “藍染め刺し子糸について”

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください