刺し子を楽しむということ

11月14日から約2週間、恵子さんが米国に来てくれました。主な目的は、淳の刺し子のワークショップ視察と滞っている刺し子の仕事の手助け、そしてその合間の孫との触れ合いでした。実質滞在期間は10日程と、決して長くない米国滞在では合ったのですが、2年ぶりに恵子さんに会えて、そして一緒に刺し子をする時間を持てて、改めて「刺し子を楽しむ」という気持ちを確認できたような気がしています。

 

なんだかんだで初めての共同作業

滞在期間中、何度か一緒に刺し子をする時間があったのですが、よくよく考えると、二人で”一緒に”刺し子をすることは初めてのことでした。それこそ、二人で、「なんだかんだで初めて一緒にやるなぁ」なんて笑いつつ、刺し子を楽しめました。親父が代表だった会社の一員だった時代、僕は営業担当として、恵子さんは総務や経理担当として、「刺し子をする会社を存続させること」が主な仕事でした。仕事の合間に、刺し子をすることはありましたし、当時から恵子さんの刺し子と襤褸の才能(センス)を見抜けていた僕は、できるだけ恵子さんの一般的な仕事の負担を減らして、恵子さんらしい作品を作って貰えればと伝えていました。

 

会社の一員だった当時、僕と恵子さんの関係は、「上司と部下」であり、「支持する側と支持される側」であり、利益になるだろう刺し子作品の制作支持を僕からお願いすることはあれど、一緒に刺し子を楽しむなんていうことは、考えもすらできないことだったのです。僕が実の母親の事を「恵子さん」と呼ぶのにも、ここに理由があります。5年もそういう関係を続けていると、なかなか「お母さん」とは呼べなくて(笑)

 

親父亡き後は、僕は米国に移住してしまったし、恵子さんも米国に来る時は違う目的を持っていたりで、実際、恵子さんが米国滞在中に刺し子をするのは、今回が初めてでした。そして、それは僕と一緒に刺し子をするのも初めてなわけで。

*恵子さんの米国滞在は約2年ぶり。僕はもう5年間も日本帰れてません(泣)

 

 

布を前に、あーだこーだ言いながら刺し子をし、針を通し、お互いと語りながら、且つ布とも語る。

数百年前の日本がどうだったかなんて、今の僕達には想像することしかできませんが、きっとこうやって、時には家族や友達が集まって、ワイワイガヤガヤしながら刺し子をしていたのかもしれません。楽しみながら刺し子をし、意見を交換し、そして一人の時間、針を持って自分と布と向き合う。そんな刺し子の原点を改めて感じられたような気がしています。

 

 

Sashiko Enjoy

刺し子を楽しむということ

主な目的のひとつだった、「淳の刺し子ワークショップの視察」。

この2年間で刺し子ワークショップを何度も受講してくれて、また様々な情報交換ができている生徒さんに恵子さんの訪米の連絡をして、集まってもらいました。最初は、「先生と生徒」という関係で始まりましたが、彼ら彼女らとは、もう友達感覚でいます。当たり前のように、彼女らは恵子さんとも意気投合して、もう十年来の友達のような感覚ではしゃいでいました。

 

彼女らが作った刺し子作品や、襤褸作品を見て、恵子さんは「凄いなぁ。センスが良いなぁ。技術も素晴らしい。」と賛美の声を送っていたのですが、ニューヨークからの帰り道、恵子さんの本音が出ました。

 

「やっぱりね、良い作品と出会うとね、悔しくなるのよね。」

 

僕らとご縁を頂いた方が素晴らしい作品を作れる様になることは、とても喜ばしいことです。僕の刺し子活動の一番の目的は、「刺し子の楽しさを広めること」で、素晴らしい作品ができてこればできてくるほど、嬉しいことはありません。恵子さんと僕の違いは、僕がまだ「アーティスト」になりきれていないのかもしれません。誰かの作品をみて、素晴らしいと賞賛の声を上げると同時に、「私だったらどうできるだろう?」と悔しさ混じりで自分を鼓舞できる。二ツ谷恵子という刺し子作家の作品の面白さは、そこに原点があるように思います。

 

ニューヨークから戻ってきて早速、淳の古布の在庫を漁り、凄まじい集中力で以下の襤褸を仕立てておりました(笑)

「細かい刺し子は淳に任せるけれど、ニューヨークで出会った新しい大切な友人を私なりに吃驚させたい。」

 

一度恵子さんにお会いして頂ければわかるとは思うのですが、本当に子供のような方なのです。だからこその作品なのかもしれません。

 

伝えたいのは技術だけじゃない

 

インスタグラムの配信だったり、英語でのウェブサイト(Upcycle Stitches | Sashiko) では度々言っているのですが、僕が刺し子を通して伝えたいのは、刺し子の技術だけではありません。上記に書いたような、「糸と布とを通して楽しめるコミュニケーションとしての刺し子」を伝えたいのです。そして、そのコミュニケーション(布と一緒に語る)を楽しむためには、刺し子の歴史的背景だったり、根本的な考え方を理解して頂く必要があり、そのために配信だったりウェブサイトの更新だったりをしています。

 

2017年から始めたNYCでの刺し子ワークショップと、1年続けてきたオンラインでの配信を通して、

「話を聞いてもらえれば、僕が何を伝えたいのかがわかってもらえるはず」

という自信が持てるようになりました。

 

「たかが刺し子でしょ?」

という声もあるかもしれません。実際に刺し子は、単なる針仕事です。

でも、その針仕事を通して、現代の日常生活における様々な苦しみだったり悩みだったりを和らげることができるような気がしているのです。現代人が忘れてしまった「気を入れる(気を配る、気にかける、気にする)こと」を、刺し子を通して今後も伝えていけたらと思っています。

 

それにしても、すんごい10日間でした。

楽しいっていうか、めちゃくちゃ濃かったです(笑)あとは営業や仕事頑張って、来年も同じ時期に恵子さんを米国に呼べるようにします!

 

 

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