大槌刺し子への講習会

 

大槌刺し子と共にプロジェクトを始めるにあたって、二ツ谷恵子が定期的に岩手県大槌町に入り、刺し子の講習会をしています。恵子が持つ、「刺し子作品制作における包括的な技術」を共有することが何よりの目的です。

10月上旬に2回目の講習会が行われました。その様子を大槌刺し子のブログが紹介して下さっています。

第二回刺し子講習会行われました

 

講習会の目的

講習会の目的が、「刺し子技術の共有」や「作り方の指導」であるのは言うまでもありません。実際に大槌の刺し子さんと膝を突き合わせながら刺し子に取り組みながら、一人の刺し子さんに一つのバッグを責任を持って作って頂く。その為には、プロデューサーである恵子が実際に指導することがとても大切だと思っています。

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技術以上の何かを伝えたい

技術や作り方の指導は当然としても、それ以上の何かを伝えたいとも思っています。「刺し子で30年以上生活してきた」二ツ谷恵子のありのままの姿や、作品を見て頂くことで、「刺し子と共にある未来」を、大槌の刺し子さんにもイメージして頂けたらと思っているのです。

「刺し子」に対して、内職に近い感覚をお持ちの方は多いと思います。その感覚は間違っていないですし、実際内職でして頂いている方もたくさんいます。

ただ僕は、大槌刺し子(というか僕が関わる刺し子)に関して言えば、決して「作業」で終わって欲しくないと思っています。

工場でのライン作業、工数を管理するような業務には決してなって欲しくない。針仕事が好きで、刺し子が好きだから、チクチク楽しく刺した上に完成品があるような、そんな刺し子であって欲しいと常日頃思っているのです。

 

だからこその二ツ谷恵子。

彼女が悩み苦しみながらも(楽はせずとも)、楽しんで生み出した作品と、その作品までの道のりを共有することで、復興支援以上の刺し子が将来に存在すると思っているのです。

 

講習会での成果

時間に限りのある講習会で全てを伝えることは難しいです。

それでも毎回の講習会で、どんな成果を挙げられているかはしっかりと把握する必要があります。制作過程としては、十分な刺し子が仕上がってきて、年末にも作品の一部が紹介できるかもしれません。素晴らしい作品になりそうです。

 

嬉しい成果

講習会の後、「今回の講習会も本当に楽しかったです!」という嬉しいコメントを頂きました。「楽しんで刺し子をする」という、今後の刺し子において根本的に大切な成果も挙げられているのではと思っています。この刺し子さんの笑顔のような、たくさんの笑顔で、大槌刺し子は今後も羽ばたけると信じているのです。

 

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講習会の課題

今後も講習会を続けていく上での課題は、大槌刺し子の課題と直結してきそうです。

何度かこのブログや僕のブログでも書きましたが、僕は「大槌復興刺し子プロジェクトは、第一義の目的は達した」と思っています。その第一義の目的とは、「継続性のあるコミュニティを作ること」です。実際、刺し子をキーワードとして、多くの刺し子さんが継続的に集まってくれるコミュニティを作ることができています。震災後、4年半過ぎてこういったコミュニティが継続していることは本当に凄いことだと思うのです。

 

と同時に、課題は「今後、どうやってコミュニティを継続させていく資金の流れを作るか」というものです。コミュニティの維持には資金が必要ですし、その為には売り上げ目標を掲げ、業務の効率改善を行い、利益を出していく必要があります。

 

ただ、ここで矛盾が生まれます。

「効率的な製造業」と「楽しん作る刺し子業」は、往々にして一致しません。刺し子はなかなか効率的にならないし、効率を重視しすぎると刺し子が楽しくなくなるのです。刺し子さんが義務のように感じてまで、コミュニティが続く必要はないとすら、僕は思っているのです。

刺し子さんは、この大槌刺し子からの収入だけで生活しているわけではないと理解しています。この「集いの場」に生き甲斐を感じて、楽しみを覚えてくれて、今の大槌刺し子という形があるのだと思っているのです。

 

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この笑顔、このコミュニティを自然消滅させることは、僕にはできません。だからこそ僕はもう一度、大槌刺し子と関わろうと思ったのです。

 

気持ちと現実をうまくバランスさせながら

震災直後に大槌刺し子を支援していた時は、僕はある会社の一員でした。当時の社長も、僕の大槌支援への気持ちを理解してくれ、多大なるバックアップをしてくれていました。母親(二ツ谷恵子)も、寝る間も惜しんで僕に力を貸してくれました。それができたのも、会社という後ろ盾があったからかもしれません。

 

今は僕も母親も後ろ盾はありません。

母親は、「刺し子でデザインする」という屋号、「Sashi.Co & 二ツ谷恵子」というブランド名で刺し子業を立ち上げたばかりですし、僕にいたっては妻のいるアメリカに移住して子育て主夫の日々です。

 

「大槌を支援したい!」と思っても、どうしても現実と向き合わなければいけないのが本音です。講習会を続けていく為にも、このプロジェクトを続けていくにも、やっぱり資金的な課題は常につきまといます。

 

だからこそ書き、だからこそ伝えたい。

では、「金銭的に難しいから支援はしない」という結論だけは導きたくありませんでした。

課題を目の前にした時に、「難しいから」と諦めるのではなく、どうしたらコミュニティを存続させ、且つ刺し子さんたちの楽しみの場であるコミュニティを今後も継続させていけるのか。

 

僕なりのその答えが、こうして文章にして多くの方にお伝えすることなのです。

支援糸を1口頂けるだけで、73メートル分の刺し子ができます。それが完成品のバッグとなり、そのバッグが売れることによって、またお金の流れが出てきます。お金の流れが淀まない限り、この大槌刺し子は継続していくのだと思っています。

 

まとめとして

大槌刺し子と二ツ谷恵子のコラボを通して、大槌刺し子の未来の一部を一緒に描けたらと思っています。震災後、4年と半年が経過しました。ハードの面では復興も進んでいるかとは思いますが、今後も、「震災前・震災後」という区切りは消えないと思っています。

「手間のかかる手仕事である刺し子」を使って、コミュニティの役割を継続させつつ、そして利益(価値)を生み出し、参加しているみんなが楽しめるような場を作っていく。

 

そんな夢物語のようなプロジェクトを、僕はどうしても形にしたいのです。

 

また二ツ谷恵子は、講習会を行う為に、大槌に伺います

大槌刺し子のみなさんと一緒に作ったバッグは、もう少ししたら形になってくるとおもいます。

僕はこうして、大槌刺し子への思い、刺し子への思いをずっと言葉にし続けます。

 

応援頂けましたら嬉しいです。

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