運針会ジャケット(20)完

運針会ジャケット(20) 完

日々針を持ち、刺し子とは何かを考えながら刺し子を紹介していく中で、一番大切にしたいものが、「刺し子の運針」です。「ライフワーク」とも言えるかもしれません。デザインだけではなく、針を動かすという運針を残したいと願う僕の気持ちを託したものが、運針会を受講下さった方々の刺し子を一つに集約する作品です。2019年に作成した運針会ジャケット (18)に続いて、運針会ジャケット(20)を形にできたこと。本当に嬉しく、またご協力頂いた皆様方に感謝の気持ちで一杯の思いです。運針会ジャケット(20)のこれまでの軌跡については、このブログ末のリンクを参照下さいませ。

18人の刺し子が桜色で統一されて

作品のデザインは全て製作者である恵子さんにお任せしています。僕は口出しもしません。ただ、最初に話を聞いた時に、「こんなにピンクが強くて大丈夫かな?」と、少しだけ不安になった記憶があります。運針会ジャケット(18)に使用した色が、それなりに大人しい色だったのもあって心配したのですが、杞憂に終わりました。というよりも、意図的に強い桜色を選んだのではないか……と思うほどに。

同じデザインの刺し子を同じ糸で刺して頂いても、結果としての刺し子には違いがでます。その違いは前回のブログで18名の方の各々の刺し子を紹介することで、ご説明ができたと思っています。違うということは、「合わない」可能性が出てくるということです。況してや、色が強く出れば、それだけ違和感が強くなる可能性は強くなります。それが、おそらくではあるのですが、「桜の季節」というモチーフを使うことによって、一つにまとめ上げられたんだと思います。18人の刺し子が一つの作品になっているとは思えないほどの一体感です。写真でこれなのだから実物は……と、実際に皆様にお披露目できる日が楽しみで仕方ありません。

飛騨高山の実家の目の前には、川に沿って桜並木がありました。上流から下流へと流れる水の流れは、実家を瀬にして経って、左から右に流れるものでした。不思議と風も左から右へ吹いていたような覚えがあり、川に浮かぶ桜の花びらと共に桜は左から右へと散っていくという風景が記憶の中に強く残っています。僕の記憶は、恵子さんの記憶でもあって、そんな桜のイメージを、麻の葉と桃色の刺し子糸を使って作ったのかな……と。本人は「うーん……」と言語化に苦しんでいましたけど(笑)

繰り返しになってしまいますが、18人の方が刺した刺し子が一つのジャケットを作っています。拡大すればパッチワークとなっている繋ぎ目も見えます。ただ、全体像で見ると違和感がありません。そして、嫌味もない。本当に素晴らしい作品になったと思います。

桜の季節に、桜と共に。

記憶の中にある桜の木と、目の前を流れる川と、運針会ジャケット(20)との写真です。

麻の葉柄なので、桜とは全く違うモチーフです。でも、違和感なく写真に収まっているような気がします。また桜の花の間から通ってくる日光がジャケット全体を照らし、桜が散っていないのにも関わらず、何かが舞っているような雰囲気を感じるのは僕だけでしょうか?

恵子さんに、「桜が散る時に、また写真を撮って欲しいです」とお願いした所です。


とても素敵な運針会ジャケット(20)を形にすることができました。今後も刺し子の楽しさを伝えて行きたく、また運針会ジャケットも続けていけたらと思っております。引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

二ツ谷淳&恵子

運針会ジャケット(20)のご報告。ご協力頂いた17人の皆様のそれぞれの針目です。
17人に恵子さんを加えて、18名の刺し子が一つの作品になっています。


【編集後記】刺し子運針会について

2017年に期せずして始まった運針会。「刺し子の運針を後世に残してやるぜ!」とかっていう野望から始まったものではなく、「運針学びたい〜」というお言葉に対して、「お金払ってまで運針を学びたい人がいるのか!」という、とても消極的な発見から始まったものでした。運針をお伝えすればお伝えするほど、「刺し子の核は運針にあるのではないか」と思うようになり、今ではその運針をお伝えすることが刺し子を残すことだとまで思うようになりました。

運針会でのご縁は大切なものにしたく、「運針会開催しておしまい!」という一過性のものにはしたくないので、定期的な開催はせず、「運針を学んでみたい」と希望を持って下さった方のご依頼で予定を調整するようにしています。クリックひとつで完了する登録ではなく、このご時世にしてはとんでもなく面倒なお願いをしているのは承知の上で、大切に運針会を続けていけたらと思っています。とはいえ、決して敷居が高いものではございません。気楽に誰でもご参加頂けます。刺し子の運針に興味を持って頂けましたら、刺し子運針会(20)の詳細をお読み頂き、ご連絡頂けましたら幸いです。

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