2019年7月、悩みに悩んだ結果、長い間インスタグラム等で無料で公開していた「写真付きの刺し子の紹介物語(英語版)」を、Patreonという、クリエイター支援サイトにて限定公開(支援者のみ閲覧可能)とすることに致しました。今回は、「なぜ支援(有料登録)をお願いするのか」という、この悩み抜いた結果の根本的な部分についてお話できればと思っています。とても大事なことなので、日本語でも文章を残しておきます。
*日本語での刺し子の紹介は、引き続きインスタグラム&フェイスブックで無料公開致します。
刺し子(日本文化)を英語で伝えることの難しさ。
主にインスタグラムとフェイスブックにて、写真を交えて僕の刺し子への理解や思い、そして何よりも日本文化を踏まえた上での刺し子の素晴らしさを、ほぼ毎日のペースで表現してきました。お陰様で、多くのフォロワーを頂いて、沢山のコメントを頂けるようになりました。それをなぜ今、台無しにする危険もあるのに、このタイミングで限定公開に引っ越すのか。
それは、「刺し子を英語で伝えることの難しさ」と「僕の能力」のバランスが上手に取れなくなってきたからです。
英語という言語は、とても「個人の主張を尊重する言語」だと思っています。その為、読み手が「読みたい内容を読む権利」を主張し、日本語のような「曖昧で包括的な前提」を期待することができません。全く同じ内容の文章を書いていても、読み手の理解力(理解しょうとする気持ち)によって、伝えたいことが伝えられない現実を沢山経験してしまいました。
当初は、第二言語としての僕の英語力の問題なのかな……とも思っていたのですが、全く同じ文章を書いているのにも関わらず、両極端な2つの意見が発生する段階で、これは言語の問題ではなく、何か他に理由があるんだろうなと思うようになりました。
本気度。たったそれだけの話。
いろいろ考えて、何人かの人にはご相談にも乗って頂いて、結果として辿り着いたのは、「本気度」という視点でした。その人が、「どれだけ本気で刺し子を、新しいことを、学ぼうとしているかどうか」。
日本以外の国で、現状で刺し子をなんとなく楽しんでいる人にとっては、もしかしたら僕の話は、不都合な真実かもしれません。日本語の情報にリーチできない人を対象に既に刺し子を教えたりして、生活を営んでいる人にとっては、または刺し子を芸術として捉えている方にとっては、僕の話す刺し子は目を瞑って(耳を塞いで)しまいたいものなのかもしれません。「私は私の定義する刺し子で幸せなんだから、それで良いじゃない。邪魔をしないで。」そう思っている人も、きっと少なからずいるんだろうと思うのです。
もしかしたら、刺し子そのものが理由じゃないのかもしれません。針仕事、手仕事、手刺繍。世界中に存在します。「何を”刺し子”って偉そうに……」という臨戦態勢で僕の文章に出会い、その結果、読みたいことだけを読んでいるのかもしれません。
もっと単純に考えると、「それほど深く考えていない。そんな熱くならないでよ。所詮針仕事でしょ」くらいに考えている人が一番多いのかもしれません。画像を見て「おっ。良いな。」と思い、第二言語者が書いている文章を斜め読みすれば、誤解が発生してしまうのも無理はないと思うのです。
上記の共通点は、「本気度の違い」です。もしかしたら全く違う考えや技術かもしれない「異国の文化である刺し子」を、本気で学んでみたいと思っているかどうか、なのだと思うのです。本気を見せてくれる人は、すぐに刺し子は習得できます。上記のように、「所詮針仕事」なので、技術そのものは、本気になれば半年もあれば習得できます。その上で、如何に刺し子の文化を異国で伝えていくか。
その為には二つの戦略があるなと結論に至りました。
- 本気な人を集めること。
- 本物を提供し続けること。
この両戦略を実践できる方法として、クリエイター支援サイト(Patreon)に至りました。
(1)の本気な人は、つまりはPatreonで支援して下さる方は、少なくとも毎月500円程度のお金を身を切って下さっている方です。誰かの文章を読む為に500円って、なかなかにハードルは高いと思っています。ただ、これにより、「応援しているけれど、何も購入しないし、お金も払いたくない」という人よりは、本気度を担保できると思うのです。逆にこれが、月額50,000円とかだと、全く別の話になってしまう(誰が何を持っているかによってのフィルターで、それは避けたい)ので、検討の余地からは外れるのですが、英語を問題なく理解できる経済圏にいらっしゃる方で、毎月500円であれば……という境界線を探しました。月に一回、スタバのコーヒーを我慢すればOKな値段です。
Patreonで頂いたお金は、これまで僕が無料で行ってきたインスタグラムでの物語執筆への報酬みたいな形になるのですが、ただ、このお金を僕個人の贅沢に使う予定はありません。頂いたお金で、様々な企画や新しい作品、より刺し子を伝えることができる「本物」を提供し続けていくことができると思っています。そして何より、いつか、刺し子好きな人が集まることができる「工房」のようなものが作れればと思うのです。米国に。そして、日本にも。
なぜ、もっと大々的にやらないのか?
「それだけの具体的な目標があるのであれば、もっと大々的にやればいいのに!」というアドバイスを頂いたこともあります。同じクラウドファンディングでも、具体的な目標を設定し、目標達成に必要な金額を皆様に支援頂くという方法もあります(というか、そっちが一般的だとは思います)。
もちろん、そちらの方法も検討しました。ただ、敢えて、この月額の方法を取ることにしました。その理由がこちらです。
- 今は一人の責任の範囲内で動きたい。人様を巻き込んでお手数をおかけすると、「お金」が必要となり、そのお金を稼ぐために本質を見誤ってしまう可能性がある。本質を見誤らないくらいに土台をしっかりした上で、人様の人生の一部を担うような流れにできたら。
- 刺し子の「日常性」を重視したい。月額の支援を頂くことで、定期的にこのページに足を運んで頂き、僕が書く刺し子の戯言(智慧)を楽しむことを日常にして欲しい。クラウドファンディングでの目標達成は、祭りのようなものです。「ハレとケ」でいえば、「ハレ」のイベント。あくまで僕は、刺し子の日常としての「ケ」を大切にしたい。
- 人は飽きる。飽きても良い。またいつでも帰ってこれる居場所として継続したい。
そんなこんなで、また敵を作りながら前に進んでいくんだなぁと、微妙な気持ちに浸りながらも、「まずは自分を守ること」を念頭に置いて、今後も継続していく所存です。僕が潰れてしまい、結果として発信がゼロになったら、本末転倒ですしね。
これだけ書いておいて言うのも変かもしれないのですが、上記最初の段落でお伝えしたとおり、日本語では引き続きInstagramとFacebook上で、包み隠さず書いていく所存です。Note.muとか、月額購読のサービスがあるのは承知しているのですが、日本語の言語と文化がわかる人との出会いやコミュニケーションは全くストレスがなく、寧ろ楽しんでいるので、今後も裾野を広げるような動きを重視していきたいと思っています。というか、本来は、僕はきっと、日本の人達ともっと刺し子で繋がりたいんだろうなぁと。これまで、インスタグラムの投稿の文字数の関係で、日本の方向けのメッセージを蔑ろにしてきてしまった面があるので、今後の投稿を通して改善していけたらと思っています。長ったらしい淳節を楽しんで頂ければ幸いです。
長い文章、最後までお読み頂き、ありがとうございました。
【編集後記】
今回、震災復興プロジェクトの大槌刺し子以外で、「支援のお願い」をしています。これ、めちゃくちゃ怖かったんです。いくら「支援」と言ってもお金のやり取りが発生する以上責任も発生するし、「重圧がかかった上で僕は楽しめるんだろうか?」という不安もありました。
ただ、「頑張れ!」ってすぐに支援してくれた方が少なからずいるということ。僕のワークショップの受講生で、「毎日刺し子について読む暇はないけど、いつか纏めて本に出してね!」と応援してくれる人。本気の方を知ることができたのは、とても良いことだなと思うのです。言葉ではなんとでも言えますからね。「行動(実践)に真実が宿る」というのは、真実なのかもしれません。日本語であれば、言葉での本気度もしっかり読み取る自信はあるのですが、英語はまぁ難しいです。
一度「支援」という言葉を使って実際に支援を頂いた後、湧き出てきた気持ちは「やっぱり刺し子を守りたい」という、僕なりの覚悟です。「刺し子を適当に考えている人(針仕事だと見下している人)」や「自分なりの刺し子の解釈を、自分の利益の為に押し通そうとしている人」が跋扈している現状で、刺し子と生きると覚悟を決めた一人の人間ができることは何だろう……とより一層思うようになりました。日本語でしか書けませんが、「自分なりの解釈の刺し子を押し付けている人」が、もしかしたら日本の刺し子の塗り替えを行っているのかもしれなくて、それが現在進行系だと感じている今、僕は「日本人としての刺し子」で、もう一度塗り直したいと思うのです。
この文章も、その湧き出てきた気持ちをそのまま(丁寧に)言葉にしたものです。……その上で、皆様にもご支援頂ければとても幸いです。日本語版は何も変えません。これまで通りに、インスタグラムやフェイスブックで、無料で文章をご覧頂けます。では淳は何を求めているのか。ご紹介させて下さい。
以下、僕が熱望する皆様の支援です。
- 「わ〜。刺し子っぽいわ〜。」と思う刺し子を共有して下さい。できれば、Sashi.Coのアカウントもいろいろ紹介&拡散下さい!日本語でも英語でも、どちらでも可能な方で。
- 「運針会」へのご参加を検討下さい。そして、運針楽しくなったら、運針動画を沢山上げて、運針の素晴らしさを普及しましょう(宗教っぽくてごめんなさい。笑)
- 運針会に参加下さった方を対象として、「サブスクリプションサービス(月ごとに糸を発送するとか?)」を検討しています。その際にはご参加頂ければ幸いです。でも、まずは何をするか決めます。ご要望があればご連絡下さい。
- 最後になるのですが、「月額の収入が安定に近づく」ことが、これほどまでに精神衛生上にプラスに働くとは思いませんでした。英語での登録になってしまうのですが、もし英語が苦にならないよー(とか頑張ってみるよー)という方がいたら、Patreonでのご支援も検討頂けますと幸いです。ただ、繰り返しご案内しているように、日本語ができる方は既にインスタグラムで本文は読めるので、リターンがゼロに等しくなってしまいます。(英語と日本語の読み比べをしたい……という方は是非!)なので、本当に、「淳、頑張れよ〜」という方だけ……。英語で手続きを進める上で、手助けが必要であれば喜んでお手伝いします。もっと言うと、「淳、支援を求めるのに英語だけとは何事だ!日本語でも作ったら支援しちゃる。」という方には、Paypal経由でのサブスクリプションが可能なので、別途個別にご連絡させて下さい。日本国内での支援は、直接恵子さんの活動の支援とさせて頂ければと思っています(日本国内で完結させ、不必要な為替差損を防ぐため)。
……また、編集後記すらも長くなってしまった。読み返して削ぎ落としたい所は削ぎ落とそうと頑張っているのですが、どうしても長くなってしまいます。それだけ内容があると思って頂ければ。
皆様、引き続き、どうぞ宜しくお願い致します。
二ツ谷 淳