刺し子な福袋 2024年の販売のお知らせ。

あっという間に年末。本年も大変お世話になりました。年末ギリギリの時期ではありますが、こうして今年も「刺し子な福袋」を準備できたこと、大変嬉しく、またありがたく思っています。

私達が刺し子をお伝えする活動(配信)を始めたその年末に「刺し子な福袋」は始まりました。当時、在庫と呼べるものは殆どなく、ただ刺し子糸を草木で染める際に副産物として生まれる番号をつけられない糸がありました。「継続性と再現性」を常に掲げる上で、なかなかに難しい問題であるのですが、同時に草木染である以上向き合わなければいけない課題でもあります。そんな中でご提案頂いたのが「無番」という糸であり、また「奇跡の緑」と言われるどうやってできたかわからないような藍染&緑の糸であり、また「刺し子な福袋」でした。

福袋として応援頂けることで、毎年新しい挑戦をすることができました。

ある年は難しいと言われる「赤い色」を草木染で。ある年は、できるだけ多くの「藍色」を藍染で。

今年のテーマは、原点に戻り「継続性と再現性」です。

とはいえ、草木染の宿命というか、100%の継続性と再現性はあり得ません。あくまで努力目標ではあるのですが、できるだけその精度を上げることを目標としてきました。そんな中で生まれた「やっぱり一点モノになってしまうギリギリの糸」が今回の福袋の中心です。

染色の過程では、当たり前ですが「カセにならずに失敗する糸」も存在します。元々絡まりやすい刺し子糸です。手作業で進める過程の中で、販売するレベルには達しない絡まってしまった糸も存在します。廃棄という手段は選択肢の中にあまりなく、できる限りの糸を小さな「糸巻き」として利用したり、恵子さんの対面でのワークショップ等で販売したりしています。その糸巻きも今回の福袋の一部となります。

「刺し子な福袋②」は、そんな糸等が中心になった福袋です。毎年の針指貫を含めてご購入いただけるバージョンと、糸だけのバージョンの二種類を準備しました。

刺し子の一部としての柄の準備

今年の4月、10年ぶりの私の帰国に合わせて「恵子さんの展示会」と「刺し子なオフ会」を開催することができました。実際に恵子さんが対面で皆様にご挨拶し、様々なお話を伺えたことは何よりも素晴らしい時間だったと思います。

そんな中で頂いた言葉が「刺し子の柄の準備について」でした。

現代の刺し子では「手芸としてのふきん」が一般的です。一目刺しのふきんが主流だとは思いますが、どのような柄でも「すでに柄が印刷してある状況で始める刺し子」が多数を占めていることは間違いないように思います。「大きな布に柄を自分で準備をして刺す」という行為は、伝統的と呼ばれたりするなど一昔前のものとして見られているのかもしれません。ただ、今でも当たり前のように柄を準備して刺し子をする人は存在しますし、また私のように「そっちの方が楽しい」と思う方も沢山いらっしゃると思います。また、「大きな布に大きな柄で刺し子をしてみたい」と願っている人も増えてきているというのが実感です。

大きな布に刺し子をすることは楽しいです。

ただ、その準備をすることに二の足を踏んでしまうのは私だけではないはずです。

そこで昨年から代表的な幾何学模様を事前に印刷した大きめの布を「印刷布」として販売を開始しています。手作業で準備をしている為、なかなか在庫ができずご迷惑をおかけしております。

印刷布を販売していていうのも変かもしれませんが、「柄の準備は面倒だなぁ」という本音と同時に、「柄の準備もできるようになって欲しい」と思っているのが実際です。図案の準備を学ぶことによって、刺し子によってできることの幅は「ぐんっ」と広がります。デニム一本に丸々刺し子をすることも、既存の大きなテーブルクロスに刺し子をすることも可能です。

厳密には存在しない「刺し子柄」

数多く存在するウェブサイトやチュートリアルの中には、「刺し子柄」として麻の葉柄や七宝柄を紹介しているものもありますが、厳密に言えば「刺し子柄」というのは存在しません。頻繁に刺し子に使われる(伝統的な)幾何学模様は存在しますが、幾何学模様そのものは刺し子だけに限ったものではありません。つまり、幾何学模様が存在するだけ刺し子として楽しめる柄も存在するのです。

そんな幾何学模様。刺し子をするという観点から見て「刺し子がしやすいかどうか」で難易度が変わってきます。基本的に線が少なければシンプルな柄にはなるのですが、それに加えて「運針がしやすい柄」は、「シンプルな柄」とすることが多いです。

柄を転写する際に頻繁に使うのが「マイラー用紙」と「転写紙」です。柄が印刷された紙があればマイラー用紙は必要ないのですが、高価な転写紙を破らないように、何度か繰り返し使えるように守ることがマイラー用紙の役割です。マイラー用紙のメリットに「コピーが可能」ということがあります。来年、様々な柄を準備したマイラー用紙の販売を計画しています。それに合わせて、今回の福袋を準備しました。

様々な柄をご自身でお好みの布(あるいは私達がお勧めする藍染布)に印刷して刺し子を楽しんで頂くことを目的とした福袋です。これまでに柄を転写したことがない方、あるいは運針を始めて間もない方には「シンプルな柄の5枚」を準備しました。麻の葉や檜垣等は自分で準備できるよという方には「複雑な柄の5枚」を準備しました。ご自身で5枚を選んで頂く選択肢も準備しました(工数が増えてしまうので、少々の追加費用をご容赦下さい)。

是非、「これまで刺し子をしたことがない柄&柄の準備方法」を、「刺し子な福袋①」にて楽しんで頂けたらと思っています。

刺し子をの限界を決めず、選択肢を広めたい。

私たちのお伝えする刺し子は「伝統的」として、「守りに入っている」とお言葉を頂くことがあります(英語圏ですが…)。伝統的であることは事実かもしれませんが、「守りに入っている」ことは決してありません。むしろ真逆で、「刺し子の限界を決めたくない」からこそ、こうして様々な刺し子をお伝えしています。確かに柄がすでに準備してある布は便利です。その便利さは否定しませんし、私達も柄が印刷された布を販売しています。

だからといって、誰かが準備した柄に刺し子をすることだけが「刺し子」とはしてほしくないのです。刺し子を楽しむ方々には、選択肢として「柄を自分で転写する技術&知識」も持っていて欲しいと思うのです。

昔の失敗の経験から、私等はできるだけ自分達で完結できるような展開を心がけています。大量生産しないことの言い訳に聞こえてしまうかもしれませんが、同時に「手仕事として存在し続けてきた刺し子」の素晴らしさを残していく為には、このような刺し子の紹介の仕方も必要なのかなと思っています。

2024年に向けた「刺し子な福袋」を通して、様々な私達の想いが伝われば幸いです。

(柄付きマイラー用紙と刺し子に必要なものを中心にした福袋)


(恵子さんの草木染め刺し子糸を中心にした福袋)


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