2015年、二ツ谷恵子がSashi.Co & Keiko Futatsuyaとして刺し子作品の制作を始めた年に、「不要な着物をお譲り下さい」という想いをブログにしました。
一般的に古物市場に出回っている古布は、大変価値があるものなのですが、同時に値段も高い為、なかなか手に入れることが難しいのと、また捨てられてしまうような布に大変価値があるものがあったりする為、「処分されてしまうはずだった布に手を加えて、もう一度、布としてのスポットライトを当てたい」という二ツ谷恵子の想いを形にするために、不要になってしまった着物を寄付していただけないかというお願いをしています。
2016年の2月と10月に引き続いて、2017年の6月にもご連絡を頂き、写真のような布(お着物)をご寄付頂きました。
お祖父様&お祖母様のお着物を処分される際に、このウェブサイトに辿り着き、「処分してしまうくらいなら」とご連絡を頂きました。
「目ぼしいものは既に知人に譲ってしまって、価値のあるものはないかもしれない。」と、利用できる品質でなければ全て処分しても構わないという条件を頂き、また送料までご負担頂きました。このようなご縁を頂けましたこと、本当に有難く、また嬉しく思っております。実際に送って頂いた中に使える布はあり、作品として蘇る予定です。
(ただし全て使えるわけではないので、半分以上は焼却処分とする予定です。もちろん、依頼主様にはご了承は頂いております。)
綺麗な布地に価値があるとは限らない
ご寄付頂けたら嬉しい布地、また逆に、ご寄付を断らなければいけない布地について説明した記事がございます。こちら→。
私共は、「刺し子」の作家であって、リメイク作家ではない為、色&柄が綺麗で肌触りが素晴らしい着物でも、ウールだったり化繊だったりすると刺し子を使って補強して作品として再利用することはとてもむずかしいのです。着物のお洒落な柄や色を効果的に使われた、リメイク作品の作家さんも、日本には沢山いるとウェブでの作家さんの活躍をみています。
私どもも、寄付頂ける全ての布地のリメイクができたら何よりの本望なのですが、数少ない人員で作品作りをしている為、全てを形にできないことをご了承頂けたらと思っています。
お問い合わせを頂く際に思うのですが、綺麗で華やかな布地に価値があるとは限らない……ということです。
実際に私共が欲しい布地というのは、藍色&紺色の布地であり、そこに絣等で染め上げられていたり、また型染でモノトーンの素晴らしい柄が染め上げられていたりといった、華やかな赤や緑といったちりめんの色ではなく、むしろ大正時代の(明治後期〜昭和初期)の農民や職人が着ていたような、綿の布地なのです。綿100%で、60年〜150年前の布地というのは、それだけでとても価値があるのです。ただ、当時は華やかな色で染め抜くというのは、大変貴重な技術だったので、多くが地味な色です。
ボロボロの布地であっても価値があります。寧ろ、西洋のアート界隈では、ボロボロの布地を「襤褸 | BORO」として価値を見出しているのです。
そんな現代では再現しようのない、価値のある、(でも実際は価値のないようにみえる)布地に、刺し子をして補強をし、解れや穴があったら補修をして、世に作品として出すことが、私どもの願いなのです。
「刺し子」を中心に、今後も作品を作り続けていきます
刺し子はあくまでも民藝の範疇にあると思っています。現状は作り手が少ないため、作品ひとつひとつの価格が上がってしまい、また生活スタイルも変更した為、柳宗悦氏が定義した民藝とは少しズレてしまっていますが、しかしながら民藝により見出された美術であることは間違いないと思っています。
つまりは、どれだけ芸術性が高まり、美術館に展示されるような作品が出てきたとしても、「民藝」の考え方を無視してはいけないと思っているのです。結果的に芸術として価値が残るのは問題ありませんが、作り手である私達が「芸術としての価値」のみを置い続けることは、それは刺し子そのものを否定するような気がしているのです。あくまで個人的な考え方ではありますが。
今後も「刺し子」を中心に、作品を作り続けていけたらと思っています。
その為に必要な布地。もし処分される予定の布地(綿の着物 / 羽織 / 半纏 / 風呂敷 / こたつがけ などなど)がありましたら、是非ともお問い合わせ頂ければと思います。
同時並行で、上記の布以外のリメイク方法も模索していきたいと思っています。
私達が勝手に布地に価値をつけているだけで、布地を平等にリサイクル / リメイクできれば、それが理想であることには間違いがないので。
どうぞ宜しくお願いします。
二ツ谷