運針会ジャケット_18

運針会ジャケット(18) – 完

刺し子における運針の楽しさをお伝えする中で、「単純な作業の中で感じるリズムによって、人柄が針目に出て、且つまた共通点をも生み出す」という、一人で刺し子をしていた頃には学び得なかった機会を頂きました。刺し子の歴史を鑑みるに、本来刺し子は一人で完結するものだったと思うのです。家族という単位の中で、必要に応じて刺し子をし、補修をし、布を大切にする。ただ、そんな一人の刺し子の中で、その地域に住む同様の刺し子をしている人と一緒に過ごす楽しい時間(場所)というのは、もしかしたら、現代に残る日本の刺し子の原点に近いものなのかもしれないと学んだのも、運針をお教えする講習である「運針会」でした。


過程を共有して一緒に楽しむプロジェクト

一人で完結する刺し子なのですが、なんとか大勢で一緒に時間(過程)を共有することができないか……と考えて、思いついた結果が「運針会ジャケット」というプロジェクトです。運針会にて運針の楽しさを共有頂ける準備ができた皆様に協力をお願いして、日本全国各地にジャケットの材料となる一定の布に刺し子をして頂く。その上で、それを恵子さんが一枚のジャケットに仕立てる。そんな、オンラインで繋がる事ができたからこそできる離れ業を2019年初頭に始動させました。


運針会ジャケット(18) のお披露目

「離れ業になるね」と興奮と不安が入り混じりながらスタートした運針会ジャケット(18)の制作は、総勢18名の方にご参加頂き、2019年晩秋に完成しました。そして、その実物の披露を、Sashi.Coの初のオフ会時に行うように準備をしていたのです。

*2020年の淳の日本帰国時に合わせて、東京でオフ会&その場で、運針会ジャケット(18)と26人の麻の葉プロジェクトの作品を実際にお披露目する段取りだったのです。コロナ禍の影響で、延期となってしまいました。本当に残念。

実際のお披露目にて、皆様の感想を頂きつつ文章を纏めてブログにて写真と一緒に報告して完了させる予定だったのですが、変わってしまった世界の中で、こうして実際のお披露目は延期したまま、写真にてご報告する形を取りました。

指揮者が恵子さんで、ご参加頂いた方が演奏者であるオーケストラのようなジャケットになるのでは……(詳細は上記のプロジェクト開始時のブログを御覧ください)と思っていたのですが、実際、18人が刺し子をしてもお互いに喧嘩をすることもなく、素敵な一枚の作品に仕上がっていると思います。

もう、こればっかりは実際に見てからしっかりと感想を書きたいので、もう少しだけお待ち下さい。もう、本当、日本帰国の延期は残念で仕方ありません。


ご参加頂いた皆様の刺し子一覧


運針会ジャケット(20)の始動

2019年に引き続き、2020年も同様に、2019年内以降に運針会にご参加頂いた方も巻き込んで運針会ジャケットを作ろうという願いと共に、2019年末に第二弾のプロジェクト、運針会ジャケット(20)のご案内を出しました。

その後、3月〜のコロナ禍において、企画者である僕の日常が変わってしまい、今年の夏が終わるまで、その一歩が踏み出せずにおりました。夏に恵子さんと共に詳細を練り、新しいデザインと共に、全く同じコンセプト(運針を楽しむ刺し子が集まれば、きっと素敵な作品になる)で、第二段目の離れ業を形にできたらと思っています。

今回のデザインは、僕の大好きながらでもある麻の葉に少しアレンジを加えたもの。恵子さんの頭の中を言葉にするのは大変なのですが、3色の草木染糸と、麻の葉を基調にした直線の柄で、どんな作品ができるのか、今から楽しみです。

*2020年10月以前に運針会にご参加頂いたことが有る方で、この運針会ジャケットへの案内メールが届いていない方がいらっしゃいましたら、ご遠慮無く淳までご連絡下さいませ(メールアドレスは運針会登録時と一緒です)。


ただ単に、楽しいことがしたい。居場所をつくりたい。

「何かのコンテストに出展したい」とか、「前代未聞の作品になるんじゃないか」とかという大きな願いや話は、紛れもない真実です。実際、コンテストに出せれば良いなと思っているし、実際に会ったことがない18人が、それぞれの思う刺し子をして、それが一個の作品になるなんて、とてつもないことだと思っています。

ただ、この運針会ジャケットの一連の流れを通して、「ただ単に刺し子がしたい」という思いから始まったSashi.Coの原点を思い出させて頂けたような気がします。


「日本人の刺し子とは何なのか伝えたい」

「刺し子は日本的なもの(日本文化を含むもの)であって欲しい」


刺し子を英語で伝える中で、迷い苦しみ、時には泣きそうになるほど傷ついて、「刺し子とは何か」を考えてきました。今も考えていますし、どうやったら上手に日本語以外で刺し子の全体像を伝えられるか日々悩んでいます。

実際、このプロジェクトの最中にも、「日本と刺し子の関係性は大切にしたい(日本の刺し子を再定義したい)」と思うあまり、あたかも日本国内の刺し子の一部を否定してしまうかのような表現をしてしまったこともあります。そんなつもりはなかったのですが、「定義」という言葉が持つ堅苦しさを上手に使いこなせなかった僕の未熟さえ故の痛みでした。

その当時から何も思いは変わっていないのですが、日本国内の日本人において受け継がれている刺し子については、全てが正解で、全てが刺し子だと思っています。「再定義」とは、何かを排除する動きではなく、「日本人が営む針仕事(だからこそ、日本人的な考え方は大事だよ)」という思いで発した言葉ですが、もっともっと大切な「楽しむ」ということを前面に出していけたらと思っています。

*英語圏では別です。英語では具体的に「日本人と日本文化と刺し子」は今後も強調していきます。

運針を通して仲間が増え、友達になり、一緒に刺し子を楽しみ、そしてその時間が空間(場所)を超えて居場所になる。2014年に恵子さんがきっかけを作り、2015年に二人で夢見た景色は、これだったのかもしれないなぁと運針会ジャケットを振り返りながら、ここまでこれたことを嬉しく思っています。

まだまだ続きます。刺し子の運針が楽しくて仕方がないという人がいて、その刺し子に興味を持ってくれる人がいる限り、僕の役目はまだまだ存在していると思うので。

運針会ジャケット(18) – の完了のご報告でした。

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