大槌刺し子と作る七宝の刺し子

2011年、震災復興プロジェクトへの協力として初めて大槌を教えた時、何を教えて良いのかもわからないまま、必死になって「当たり前を言葉」にしてお伝えしていました。その後、ご縁が続き、2017年より、英語と日本語で刺し子と運針をお教えするようになりました。2011年、初めて大槌を訪れた時とは比べ物にならない程、教える技術は向上しているように思います。もっと良い伝え方があったんじゃないかと振り返ることもあるのですが、同時に今存在する大槌刺し子の、大槌刺し子らしい素敵な姿に心から尊敬の念を抱いています。

そんな大槌刺し子。2021年に10年目を迎えることになりました。震災から、もう10年。あるいは、まだ10年。当初は、この10年間で株式会社化(利益を出すことを主目的とした団体)としての一人立ちを目標としていました。20周年を迎える運営母体のテラ・ルネッサンスの皆様の覚悟と共に、「大槌復興刺し子プロジェクト」から「大槌刺し子プロジェクト」と名称を変更し、ロゴも変更し、テラ・ルネッサンスの一部として新たな一歩を踏み出そうとされています。そんな区切りの一年に何かを形に残したい……と企画したものの一つが、「大槌刺し子と作る七宝の刺し子タペストリー」です。

ご縁が繋がり、今がある

長年刺し子と共に生きてきている私達ですが、2013年末、一度全てを失いました。一度は刺し子から離れた所で生きていこうと腹をくくったつもりではいたのですが、その強がりにも似た薄っぺらい覚悟は数ヶ月で吹き飛んでしまい、なんの後ろ盾もない状況の中で、再度刺し子を始めました。それがこの「Sashi.Co」であり、また英語での「Upcycle Stitches」です。実店舗も持たず、母と息子の二人のプロジェクトです。こんな世情にも関わらず刺し子を続けることができているのは、ひとえに皆様とのご縁があったからです。誇張でもおべっかでもない、純粋な気持ちです。ウェブサイトを通して、配信を通して、インスタグラム等のSNSを通して、皆様とのご縁を頂き、そのご縁が繋がり続けているからこその今です。

そのご縁は、「運針会」という名前で、居場所として守り、継続することができています。こんな素敵なご縁を今後も繋ぎ続けたい。私達がご縁を頂いた大槌刺し子と運針会をも繋ぎたい。ご縁を円で繋ぐことができたらどんなに素敵だろうか……という思いで、左側を大槌刺し子の皆様に、右側を運針会の皆様に刺し子をお願いして、総勢__人の刺し子で、一つの作品を作り上げました。

”七宝という円(縁)を繋げて、流れ(円)を作り、その円(縁)が花のように広がっていく”ようなイメージを描き、一つの作品にできたこと。手を合わせたような形にも見え、またそうなってほしいという願いも込めて、名前として「祈りの七宝タペストリー」として大槌にて保管して頂く予定です。なにより、恵子さんの思いを中心に様々な方々の思いを一つの作品にできて、心より嬉しく思っています。

*「祈りの七宝タペストリー」は非売品として大槌刺し子プロジェクトにて保管予定です。ギャラリーでの展示会やイベント等にてお披露目できる機会があるかもしれません。このタペストリーには、大槌にて刺し子をして頂いている方や、恵子さんを手伝ってくれている刺し子さんに加えて、18名の一般の方にもご協力を頂いています。運針会でご縁を頂いた、日本各地の、また日本国外からもご参加頂いた18名の方々です。この18名の方々には材料費と送料をお支払い頂き、大槌への実物の寄付としてプロジェクトの一部とさせて頂きました。この場をお借りして、心より御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

大槌刺し子と私達の活動についての詳細は、以下のブログに簡単に纏めております。

みんな違ってみんな良い

このブログでも何度かご紹介した私達の基本概念なのですが、私達の刺し子には絶対的な正解はありません。もちろん、刺し子をする際のコツや技術、大きな作品を作る際の指示等、様々なお願いはしているのですが、大原則として、どの刺し子も素晴らしいのです。みんな違ってみんな良い。楽しんで針を動かすことが、一番大切だと思っています。祈りの七宝タペストリーでも、私達の思いを形にすることができたと思っています。

このようなプロジェクトを今後も続けていけたら良いなと思っています。

誰かの居場所で有り続けたい

刺し子は針仕事です。その為、基本的には一人で行う作業です。針を動かして布を補修しなければいけなかった昔の日本で、その刺し子は家庭内で行われ、またその地域で技術の継承があったのだろうと思っています。一人で行う刺し子ですが、ただ、当たり前のように家族という、はたまた地域という居場所があったのも事実だろうと思うのです。v

現代において、「繋がる」というのは、それほど難しいことではありません。インターネットを通して世界中の誰とでも連絡ができ、また繋がることができます。ただ、それは繋がりの希薄化になってしまう可能性もあります。私達が作り、そして守っていきたいのは、繋がり以上の「居場所」です。

「誰かの居場所を作りたい」

言葉で書くほど簡単なものではありません。ただ、「来る者拒まず去る者追わず」の気持ちでいれば、作ることは可能だと思っています。そして、運針会という名前で、その居場所は作れたと思っています。

刺し子はとても単純な針仕事です。誰にでもできます。だからこそ、こうして運針や刺し子という共通の「楽しい」を通して、ご縁を頂くことによって、針を動かす楽しさを続けて行けたらいいなと思っているのです。

*運針会の詳細については以下を一読ください。

刺し子に対する思いを文章にし、またYoutubeにて配信という形を取り言葉にしています。是非、ご覧頂けたら幸いです。

 

 

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